僕らが子供の頃は自分の部屋を持っている小・中学生なんて珍しかった。

ほとんどの子が居間のちゃぶ台で宿題をしていた。

特に冬場になるとこたつがあるので、その温かい部屋に暖を求めて家族みんなが集まってくる。

そうすると部屋の温度だけでなく、家族の気持ちも雰囲気も温かくなれる。

そんな家族みんなが集まれる「場所」があった。

 

 今はどうだろう。家の中心はどこだろう。家族の中心には何があるのだろう。

今やテレビやビデオ、電話は各部屋にあり、チャンネル争いをすることなしに、誰にも気兼ねせずに、自分の見たいものを見、長電話だってできる。

子供たちは居間にいるよりも自分の部屋にいた方が気楽だと感じているのではないだろうか。

そんな「個」を尊重した社会のニーズに応えて、個室を重視した家が最近増えている。

本当に家もそれでいいのだろうか。僕が家づくり考える時のモチーフの一つは「家族が仲良く生活できる家」である。

住み心地がいいというのは、ただ単に誰にも気兼ねしなくていい、自分だけの空間がある家ではなく、一緒に生活している家族がお互いに気兼ねすることなく、自然に思いやりを交換できる家、そしてみんなが集まれる場所がきちんとある家だと思っている。

オール電化住宅とか、三階建て住宅等々、大きくて、個性的で、カッコよくて、立派で便利な家、「いい家」の基準はいろいろだが、やっぱり本当に家族を大切にできる家が一番「家」としての機能を果たしていると思う。

決して家は建てることが目的であってはいけない。

建った時点で目的は果たされ、後はただ雨、風をしのげればいいとか、快適な生活があればいいということになるからである。

家庭は社会の最小単位。その家庭を物資両面で支えられる家があってこそ、人は社会の中で頑張れるのだ。