杉の魅力   珪藻土の魅力   ヒノキについて
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世の中のほとんどの家は自然環境の中に建てられます。人工物で密閉された空間に建てられるものではありませんので、都会の真ん中であっても、それは自然環境の中に建てられるということになります。
一方、自然は自ら浄化機能を持ち、長期間を費やしてでも異物は排除しようと動きますが、逆に自然に近いものは優しく守られていくように感じます。
夏と冬の温度差、湿度差が激しいこの日本で、長い年月を耐えてきた世界に誇るべき木造建築物は、自然環境と見事に調和し、この点で理にかなった作りになっているのです。

私の設計する家も、自然との調和を最も大事なテーマとし、環境に守られる息の長い家作りを目指しています。
建材としては、主に地元産の杉材とヒノキ材を用います。また、内壁の塗装には主に珪藻土を用います。木材としてはほとんどが杉材ですが、水回りや外の濡れ縁(デッキ)などにはヒノキ材(またはヒバ(アスナロ))を使います。

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1.杉の魅力

杉は一般的には次のように考えられています。
長所・・安い、加工しやすい
短所・・傷つきやすい、耐荷重が弱い、水に弱い

しかし、実は建材としてみたときに杉の長所はこれだけではないのです。
住宅用の建材として他に換えられない次のような魅力があります。
・木肌が暖かい(蓄熱性がよい)
・当たりが柔らかい
・湿気を素早く吸収して木肌がサラッとしている

短所と言われる傷つきやすさも、浅い傷なら水分を含ませておくだけでかなり回復しますし、耐荷重の弱さも力のかかる方向や十分な厚みを計算して用いれば全く不都合はありません。それにも増して、前述の人肌に心地良いその感触は、内装材(特に床材)の特徴としては最も高く評価されるものだと思います。

ただし、これらの特徴は、全く表面加工(塗装)をしていないカンナ仕上げのみの杉材の話です。
自然建材は呼吸できる状態で使ってこそ、その持ち味が生きてくると考えます。

あるとき、施主のおひとりと杉材の心地よさについて、お互いに実感に基づいた話をしていたときに、「」と気づいたことがあります。
なぜ杉材が最も人肌に優しいのか・・・それは、建材となる杉が人と同じ時間で成長するからではないか、生きる波長が人と合っているからではないか、ということです。

人は通常20歳前後で社会に出て人の役に立つようになりますが、杉材も建材として使われるのは20年を過ぎた当たりからで40年も経てばりっぱな大黒柱として使えます。
100年以上経った材は家を支える梁や家具として使えば強く頼もしいものですが、直接肌が触れる床材としてはやや堅く冷たくなってきます。
そこに住む人と同じような年齢の杉材がもっとも肌に優しく、建材としての機能も十分備えているということではないでしょうか?

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2.珪藻土の魅力

珪藻土のぬり壁も最近シックハウス症候群対策として見直されてきた材料です。
(珪藻土とは、海中の植物性プランクトンの死骸が長い時間をかけて堆積した地層から採れる土です。)
一概に珪藻土と言ってもその配合や品質は様々です。

質の良い珪藻土(セラミックなどの混合物や加熱処理の温度などで差が出ます)に適度な植物繊維(藁など)が含まれた壁材は、吸放湿性に優れ、ある程度の空気の浄化作用や防音効果もあります。
例えば、焼き肉の煙やたばこの煙などが充満した部屋でも次の朝には全くにおいが感じられないほど消えてしまいます。これは飲食店などでも言われていることです。
香りの強い杉や檜を使った内装に適度な面積の珪藻土壁を組み合わせると、不思議と香りが和らぎ、優しい香りの室内空間になるものです。

また、吸放湿性については特に優れた特性を備えます。それは、体で感じられるほどで、梅雨時の体感湿度を下げてくれます。また、内部にある程度の湿度を保つため、夏は肌触りがひんやりとし、冬は昼夜の激しい湿度差を見事に緩和して安定性のあるうるおいを保ってくれます。
もちろん、人体に有害な物質を放出することはありませんし、逆に空気中の有害物質を分子レベルで吸着する効果も持つようです。

ただし、珪藻土の壁はクロス張りの壁などに比べると傷つきやすく、摩擦によって変色しやすいものです。
しかし、杉材と同様、少々のきずは水を含ませることによってある程度は消えるものですし、誤って汚したり、こすって黒くなったりしても局所的であれば消しゴムなどで消すことができます。
全体的な経年による変色は「落ち着き」の演出ととらえて逆に楽しむのも良いのではないでしょうか?

杉材と組み合わせることにより、その質感、色合いのコントラストなどは絶妙なバランスです。見た目の均整は優れた機能も伴うものだと実感します。

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3.ヒノキについて

ヒノキ(檜)は水に強いので主に風呂などの水回りや外の濡れ縁(デッキ)などに使われます。
特に浴室の壁・天井材や足下に敷くスノコとして利用すると、その優れた自然の抗菌作用によってカビの発生などを防ぎます。
ただし、特に水気の多いところでは節が抜けやすいため、予め抜いて埋めたものを建材として使うことが一般的に行われます。なぜそう言った抜けやすい節(通称「死に節」)ができるかと言うと、ヒノキの育った環境などに大きく起因しています。

節とは元々その延長に枝が付いていた部分で、死に節はその先の枝が枯れていたところにできます。
枯れ枝ができる要因は、例えば、密集して植えてあったヒノキの場合、下の葉まで太陽光が届かないため枯れてしまいます。
死に節を作らないためには、十分な間隔を空けて植林するとか、育てるときに下の枝を予め取っておくいわゆる「枝打ち」をちゃんと行っておくといった手入れが必要です。
杉でも同じ事が言えますが、ヒノキの場合は特にその結果が顕著に現れるので、死に節になる恐れのある節については予め埋め直すという処理を施すのです。

ですから、節を埋めた材を使いたくない場合は、そのように丁寧に育てられた材木から選ばなければならないと言うことになりますが、最近は全く死に節がない材を手に入れることは難しくなっています。どの山でどの人がどのように育てた材かということから調べることができれば良いのですが、現状では困難ですし、また、そのような材のみを集めてくることはコスト的にもかなり無理をしなければならなくなるでしょう。

しかし、ヒノキの持つ素晴らしい特性は、節のある無しに関わるものではありません。杉にしてもヒノキにしても材としてのその良さを十分見極め、適材適所で生かして行くことこそ大事だと考えています。