はじめに   誰のためのバリアフリーか?   バリアとは何か?   バリアフリーの実際
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1.はじめに

バリアフリーはかなり前から建築業界でも取り組まれていることですが、その内容は、フルフラットな床、段差はスロープに、廊下は広く、というような主に足を使った移動が困難なお年寄りや身体に障害をお持ちの方を対象としたものになっています。
実は、公共の建築物で適用された手法が一般家庭にも取り込まれているというのが現状です。
しかし、一般家庭での住宅を考えるときに果たして万人向けの手法を適用するだけで良いのでしょうか?
一般家庭のように、主に利用する人が限られている建物では次のようなことを考える必要があります。

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2.誰のためのバリアフリーか?

バリアフリーを考えるときに、まず第一に挙げられるのは誰を対象としたものか、と言うことですね。
もしご家庭にお体が不自由になったお年寄りや、何らかの障害を持つ方、小さいお子さんがいらっしゃる場合は、まずそのような方のために考えます。また、家族が将来そうなった時のことを考慮して検討する方もいらっしゃいます。
では、取り除くべき「バリア」とは何でしょうか?

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3.バリアとは何か?

一般的には、移動にじゃまな段差や狭い廊下の壁、操作が困難なスイッチ類などがバリアと言われます。
しかし、全てのそういったものがバリアという見方で排除されて良いのでしょうか?
家というのは、そこで食事をし、家族の団らんを楽しみ、寝起きをし、風呂に入り、趣味を楽しみ、1日の疲れを癒す場所です。自慢の場所、大事にしたい場所、お気に入りの場所が必ずあるところです。

例えば、部屋の間に大きな段差があったとしても、お父さんにはにはちょっと腰を下ろしてくつろげる場所であったり、廊下の壁を狭くしている飾り棚もお母さんにはお気に入りの家具であったり、操作が難しい場所にあるスイッチ類もそれを操作できるようになった子供には自慢の場所であったり・・・家は、基本的に今住んでいる家族が居心地良く住める場所であることが最も重要なことだと思います。

私が作る家も、将来のことも考慮に入れながら、今誰が住むのか、ということを基本に居心地が良く、住むことが楽しい場所になることをいつも考えています。
そのためには、積極的な段差なども取り入れます。画一的な「バリアフリー住宅」ではつまりませんものね。

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4.バリアフリーの実際

例えばあるお宅の場合、ご家族にはお体の不自由な方はいらっしゃいませんが、訪ねて来るお客様には車いすの方もいらっしゃいるというケースがあります。
ここでは、玄関までの高さを車いすでもひとりの介助があれば上がることのできる段差と幅で階段を設けました。これがスロープでは普段に歩く場合は却って足首に負荷がかかりますし、例えば小さいお子さんが外遊びに疲れてちょっと腰掛けて休憩、というには物足りないからです。
また、廊下の幅とトイレの引き戸の幅などは車いすでも十分通れるものにしました。お風呂にもタイルの上に檜のすのこを敷けば脱衣室の床と高さがそろうようにしました。
明かりなどのスイッチ類は車いすに座っていても手が届く高さ(低さ)にし、コンセントなどは車いすから身を少しかがめれば届く高さ(低さ)にしました。

ただし、このお宅には居間から続く部屋に床から40cmも高い和室があります。
また、台所の床は居間の床から40cmも低い場所に作られています。
40cmの和室の高さは普段は舞台や隠れ家的な面白さがあり、車いすでいらっしゃった方があれば、車いすをそこに横付けにし、ちょっと介助して平行移動すれば健常者と一緒に居間の床に足を下ろして座ることのできるベンチの役割をします。疲れればそのままゴロッと畳の上に寝転がることもできます。
台所の段差は、もし、将来家族で台所に立つ人が降りられなくなった場合はリフォームが必要ですが、今はそれよりも台所仕事をしながら、小さいお子さんや掘り式テーブルに座っている家族やお客様との目線の高さをなくすことが大切な役割となっています。

“過ぎたるはなお及ばざるがごとし”ある意味過剰なバリアフリー化はその対象者に必要以上に健常者との違いを意識させるものにもなります。ちょっとした心配りが最も心地良いと言うこともあるのです。

これは一例ですが、このようにバリアフリーと言ってもいろいろな考え方でその家に住む人、訪ねてくる人が楽しめる家づくりができるのです。